『戦争と平和』を読もうと思い立ったとき、まず直面するのが「どの翻訳を選ぶか」という問題です。現在、日本語訳は複数の出版社から出ており、文体や読みやすさがそれぞれ異なります。
この記事では、主要な翻訳版の特徴を比較し、読書の目的や好みに合わせた選び方を整理しています。はじめて挑戦する方も、再読を考えている方も参考にしてください。
なぜ同じ作品に複数の翻訳があるの?
そもそも、なんで同じ『戦争と平和』なのに、
いろんな翻訳バージョンが存在するんでしょう?
それ、けっこうあるあるなんですよね。
実は、翻訳って単にロシア語を日本語に
置き換えるだけの単純な作業じゃないんです。
翻訳する人の文章スタイルや言葉の選び方、
作品をどう解釈しているかによって、
全体の雰囲気や登場人物の印象が
ガラッと変わるんですよ。
例えるなら、同じ食材を使っても、シェフに
よってフレンチになったり和食になったりするの
と似てるかもしれません。
だからこそ、自分に合った「シェフ(翻訳者)」
を選ぶのが、名作を美味しく味わうための、
めっちゃ大事な第一歩になるんです。
主要な日本語訳を徹底比較!それぞれの特徴とは?
まず、現在新刊で手に入る3つの訳を
巻数と全巻の総額で並べてみます。
『戦争と平和』は長編なので、
ここがいちばん現実的な判断材料になります。
| 訳者 | レーベル | 第1巻の刊行 | 巻数 | 全巻の合計(税込) | 総ページ |
|---|---|---|---|---|---|
| 工藤精一郎 | 新潮文庫 | 1972年 | 全4巻 | 4,565円 | 2,848ページ |
| 藤沼貴 | 岩波文庫 | 2006年 | 全6冊 | 7,898円 (6冊セットなら6,996円) | 3,208ページ |
| 望月哲男 | 光文社古典新訳文庫 | 2020年 | 全6巻 | 7,304円 | 公式サイトに記載なし |
表にすると、値段の差がはっきりします。
いちばん安い新潮文庫と、いちばん高い岩波文庫
(単品で6冊そろえた場合)では、
3,333円の開きがあります。
ここを押さえたうえで、
それぞれの中身を見ていきましょう。
岩波文庫版(藤沼貴訳) 原文の重厚さを味わいたい本格派へ
「どうせ読むなら、トルストイが書いたその
ままの雰囲気を味わいたい!」
そんな風に考えている本格志向のあなたには、
藤沼貴さん訳の岩波文庫版がおすすめです。
この翻訳の最大の特徴は、
なんといっても原文への忠実さです。
格調高い、どっしりとした文章で、
19世紀ロシアの空気感を肌で
感じるような読書体験ができます。
ちょっと硬派な文章なので時間はかかるかも
しれませんが、じっくり腰を据えて
作品世界にどっぷり浸かりたい人には、
これ以上ない一冊ですよ。
買うときに知っておくと得なのが、
6冊セットなら6,996円で、単品で6冊
そろえるより902円安くなること。
最初から全部読むと決めているなら、
セットのほうがお得です。
光文社古典新訳文庫版(望月哲男訳) 初めてなら断然コレ!
「長編小説って、途中で挫折しちゃうんだよな…」
「難しそうなイメージがあって、なかなか手が
出せない…」
悩みますよね、正直。
そんなあなたの選択肢になるのが、
望月哲男さん訳の光文社古典新訳文庫版です。
この翻訳は、とにかく現代的で読みやすい!
まるで最近の小説を読んでいるかのように、
スラスラと物語に入っていけるんです。
難しい言葉や古い言い回しがほとんどないので、
人間ドラマやストーリーそのものに集中できます。
『戦争と平和』デビューで
「まず最後まで読み切ること」を優先するなら、
この光文社版が候補の筆頭になります。
新潮文庫版(工藤精一郎訳ほか) 長年愛される王道の安心感
「昔からある有名な翻訳がいいな」「たくさんの
人が読んできた定番を選びたい」
そんな安定感を求めるあなたには、
工藤精一郎さんたちが訳した新潮文庫版が
ぴったりです。
これはもう、「ザ・定番」と言える翻訳ですよね。
長年にわたって多くの読者に親しまれて
きただけあって、文章もこなれていて、安心して
読み進めることができます。
上で紹介した岩波文庫版と光文社版の、
ちょうど中間くらいの読み味、
というイメージでしょうか。
「どれにしようか決められない!」という時の
逃げ道としても心強い一冊です。
お金の面でも有利で、全4巻あわせて4,565円と
3つの訳のなかで最も安く、冊数も最少です。
光文社版とくらべると2,739円の差になります。
かつての名訳(米川正夫訳など) 翻訳の歴史に触れる旅
最後はちょっとマニアックですが、
米川正夫さんをはじめとする「かつての名訳」
たちです。岩波文庫の『戦争と平和』は
現在は藤沼貴さんの訳に入れ替わっているため、
これらは新刊の棚では見かけません。
これらの翻訳は、今の言葉とは少し違う、昔の
日本語の美しさを感じさせてくれます。
手に入れるのは古書店や図書館で探す必要が
あって大変ですが、まるで宝探しみたいで
ワクワクしますよね。
翻訳の歴史そのものに興味がある方は、
見かけたらぜひ手に取ってみてください。
よくある質問
あなたに最適な翻訳の選び方
ここまで色々な翻訳を紹介してきましたが、
「結局、どれがいいの?」って思いますよね。
迷いますよね、こういうの。
最後に、あなたのタイプ別に「これを選べばOK!」
という指針をまとめますね。
とにかく読みやすさ重視!初めて読むなら
もしあなたが『戦争と平和』に初めて
挑戦するなら、あるいは長編小説に
苦手意識があるなら、
「光文社古典新訳文庫版」が有力です。
3つの訳のなかで最も新しい2020年の翻訳で、
言葉づかいがいまの日本語に近いぶん、
読み進める負担は軽くなります。
大事なのは、難しい言葉に引っかからずに、
まずは壮大な物語の世界を最後まで楽しむこと。
何よりもまず「読破する」という成功体験が、
あなたにとって大きな自信になりますから。